賃貸併用住宅で相続対策
「小規模宅地等の特例」を上手く活用

注目される賃貸併用住宅

今、都市部における住まいの建て替えの方法として、「賃貸併用住宅」が注目されています。
賃貸併用住宅は、自宅だけを建てる場合に比べて家賃収入で自宅部分のローン返済の負担が軽減でき、収益性がよければローン返済の負担がなく、あるいはプラスアルファ(+α)の手取り収入を得ることもできます。

また、賃貸部分の割合が大きければ事業性のアパートローンを利用することができるので、ご高齢の方でも年齢に関係なく借入が可能です(法定相続人の連帯保証が必要等)。これまでローンの借入が難しいと建て替えを諦めておられた方やご高齢の方も、賃貸併用住宅にすることによって住まいの建て替えが実現できます。

また、賃貸併用住宅は収益性や資金計画に対する魅力に加えて、相続税対策にも⼗分な効果が得られます。

平成27年の相続税の改正で基礎控除額が引き下げられ、住まいを持っているだけで相続税がかかる時代となってきました。これからの住まいづくりにおいて「相続税対策」も検討課題のひとつです。賃貸併用住宅は、借入金と建物評価のギャップによる相続財産の圧縮効果も当然のことながら、将来の⼆次相続を⾒据えて、小規模宅地等の特例の活用による節税効果も期待することができます。そこで、住まいにかかる相続税対策として賃貸併用住宅が注目されるようになって来ました。

賃貸併用住宅と「小規模宅地等の特例」

「小規模宅地等の特例」によって課税価格が減額される宅地には、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地等含)、貸付事業用宅地等の3つがあります。

賃貸併用住宅に利用されている宅地は、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の利用割合に応じて按分適用することができます。特定居住用宅地等の適用は、相続する人の住まいの状況によっても大きく異なってきます。1次相続で配偶者が相続される場合は無条件で80%(330㎡限度)の減額が適用されますが、2次相続の場合で被相続人と別居して持ち家に居住している相続人と配偶者所有の持ち家に居住している相続人は、適用を受けることができません。

最近の相続では、このような持ち家に住む別居親族が相続されることが多く、居住用宅地に対して「小規模宅地等の特例」の適用が受けられないケースが多く⾒られます。
特定居住用宅地等として特例の適用を受けることができなくても、賃貸併用住宅であれば、賃貸部分に対応する宅地について貸付事業用宅地等の適用を受けることができます。

⼟地と建物の名義人が同じであれば、まず賃貸部分に対応する宅地は、貸家建付地評価として概ね20%程度※の評価額が減額されます。その上で、小規模宅地等の特例として、貸付事業用宅地の50%(200㎡限度)減額が適用されますので、あわせて概ね60%の評価減となります。部分的とはいえ大きな節税効果があります。

※貸家建付地評価=自用地価額×〔1−借地権割合×借家権割合(30%)×賃貸割合〕
借地権割合は、地域によって異なります(都内の住宅地では、概ね60〜70%)。

下図の事例のように、特定居住用宅地等の適用が受けられない評価額6,000万円の宅地に賃貸併用住宅(賃貸部分の割合75%)を建てた場合、2,723万円減額されます。評価額は3,277万円となり、大きな節税効果が得られます。
またさらに、相続時に建築資金として借入れたローン残高があれば、マイナスの相続財産(債務控除)としての軽減効果も期待できます。

賃貸併用住宅と「小規模宅地等の特例」賃貸併用住宅と「小規模宅地等の特例」

配偶者がおられる場合(1次相続)は、配偶者の法定相続分、あるいは1億6千万円のいずれか多い額の相続財産については配偶者の税額軽減の特例を受けることができますが、2次相続においては大きな控除も期待できません。
相続税対策では、1次相続後の住まいの状況(親御様のひとり住まい)なども考慮して、2次相続を⾒据えた対策を講じることが大切です。

賃貸併用住宅で
“豊かで安心・安全な住まいづくり”

賃貸併用住宅は、先にも述べましたが収益性に魅力があり、相続税対策にも効果があります。加えて、収益性を確保することで年齢に関係なく借入が可能となり、シニア世代も借入を利用して住まいを新しく建て替えることが可能です。

厚生労働省公表の「平成 28 年簡易生命表」では、日本人男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳と男女とも過去最高となりました。
長寿化時代の人生の後半期、豊かな住生活を送るうえで、安心・安全の住まいは欠かせません。 家賃収入でローン返済の負担が軽減でき、相続税対策にも効果的な賃貸併用住宅は、まさにシニア世代の住まいづくりといえるでしょう。

監修/FPオフィス東京
ファイナンシャルプランナー 川嵜 信⼆