住まいと相続税

平成27年の相続税の改正で、納税者は1.8倍に!

平成27年以後の相続については、基礎控除額の引き下げや最高税率の5%アップなど、相続税が増税方向へと改正されました。

その結果、相続税の課税割合は大幅に増加しました。平成27年中に亡くなられた方(被相続人の数)は129万444人(平成26年127万3,004人)で、そのうち相続税の課税対象となった被相続人の数は10万3,043人、平成26年の5万6,239人に対して83.2%増加したことになります。課税割合は8.0%(平成26年4.4%)で、平成26年より3.6ポイントアップとなりました。
また、これ以外にも納税額はゼロで相続税申告書の提出があった被相続人の数は、平成26年の1万6,895人に対して平成27年は3万27人で77.7%増加しました。
相続財産が基礎控除額を超える場合で、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減によって納税額がゼロとなる場合でも、相続税申告書の提出が必要となります。

納税額はゼロで相続税申告書の提出があったのは、以下のケースが考えられます。
(1) 財産額が1億6千万円以下で配偶者が全財産を相続したケース
(2) 小規模宅地等の特例を適用して、居住用宅地等の評価額を軽減されたケース
これらのことから、納税額ゼロの申告には、小規模宅地等の特例が大きく影響していると思われます。

相続財産の多くの部分が居住用の土地建物となる相続税の課税対象者にとっては、特定宅地の評価額を大きく軽減する「小規模宅地等の特例」が相続税対策のポイントといえるでしょう。

被相続人数の推移

被相続人数の推移

課税割合の推移

課税割合の推移

⼩規模宅地等の特例

⼩規模な宅地の相続については、評価額を減額する特例が設けられています。
例えば、被相続人が居住用として利用していた宅地については、残された遺族の生活基盤の安定の配慮から、評価額が80%減額(20%評価)され、相続税の負担が大きく軽減されます。それが『⼩規模宅地等の特例』です。

この『⼩規模宅地等の特例』には、居住用宅地等の他に、事業用宅地等や貸付事業用宅地等も適用の対象としています。そして、それぞれの宅地の利用形態やその宅地を相続する人によって特例適用の可否が判断されることになります。

この『⼩規模宅地等の特例』は以前からありましたが、平成26年までの相続では『⼩規模宅地等の特例』の適用を受けなくても、相続税の基礎控除額以下に収まっていたことも多くありました。平成27年の改正以後は、宅地の評価だけで基礎控除額を超え相続税が課税されるケースが多く出てきますので、これからは、この『⼩規模宅地等の特例』適用の可否が相続税対策のポイントと⾔えます。

『⼩規模宅地等の特例』の内容は、下の表の通りです。

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相続する土地 評価減の
割合
限度面積 相続する人
1.特定居住用宅地等
※被相続人の居住の用に供されていた宅地等
▲80% 330㎡ ①.配偶者(無条件)
②.同居親族(保有継続・居住継続)
③.配偶者及び同居親族でその被相続人の相続人である人がいない場合
持ち家なしの別居親族(保有継続)
※相続開始前3年以内に日本国内になる自己又は自己
の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと。
2.特定事業用宅地等
(特定同族会社事業用宅地等)
▲80% 400㎡ 親族(申告期限まで保有継続・事業引継ぎ)
3.貸付事業用宅地等 ▲50% 200㎡ 親族(申告期限まで保有継続・事業引継ぎ)

特に居住用宅地については、相続人の要件が詳細に限定されています。住まいの形や住まいを相続する人によって相続税が大きく変わってきます。
特定居住用宅地等として特例の適用を受けられる相続人は、①配偶者は無条件で、②同居親族は相続税申告期限まで保有かつ居住を継続していることを要件に適用を受けることができます。また、③配偶者も同居親族もいない場合は、別居親族の持ち家の有無が適用の要件になります。別居親族で持ち家を所有し居住している場合、あるいは配偶者所有の持ち家に居住している場合は、適用を受けることができません。持ち家を持たない別居親族および持ち家はあるが相続開始前3年以内にその持ち家に居住したことがない別居親族は、相続税申告期限まで保有していることを要件に、特例の適用を受けることができます。

住まいづくりにも相続への備え

住まいを相続する人によって小規模宅地等の特例の適用の可否が異なってきます。
二世帯住宅に居住する子であれば評価額の80%が軽減されます。また、子供たちが独立して同居の予定がなければ、夫婦二人だけの必要なスペースを確保し、残りのスペースを賃貸住宅で活用する賃貸併用住宅が効果的です。居住用部分に対応する宅地に特例が受けられなくても賃貸部分に対応する宅地に特例を受けることができます。家族の状況や住まいの形に応じて特例の適用効果も変わってきます。
これからの住まいづくりは、将来の相続への備えも十分考慮してご検討されることをお勧めします。

監修/FPオフィス東京
ファイナンシャルプランナー 川嵜 信⼆