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伝えたいのは、四季を楽しむくらし

料理家 坂井より子さん

長年の主婦経験を生かして
ほっとするような家庭料理や
くらしの知恵を伝えておられる坂井より子さん。
みずみずしい旬の恵みで食卓を彩り、
工夫しながら前向きに家事をこなす。
その日々は心地いい日本のくらしそのもの。
巡る季節を感じながら日常を楽しむ
自然体のくらしを見せてもらいました。

旬の恵みを余すところなく生かして

 坂井より子さんのお住まいがあるのは、海にも山にも近く、豊かな自然が広がる神奈川県・葉山。娘さん夫婦、息子さん夫婦、3人のお孫さんと一緒に、三世帯9人の大家族でくらしています。
 長年、専業主婦として家庭を切り盛りしてきたより子さんが何よりも大切にしているのが日々の食事です。数年前、ご主人が家の近くで畑を始めてからは、毎日新鮮な野菜が食卓に上るようになりました。夏にはトマトやナス、ピーマン、大葉など毎日たくさん収穫できて食べ切るのが大変なほど。おいしいうちにドライトマトや大葉のジェノベーゼなど、自家製の保存食を仕込みます。「保存食や常備菜があれば、さっと一品できるから、料理がぐんとラクになりますし、急なお客さまにも慌てずに済みます」

 ご主人は、畑での野菜づくりだけでなく、お友達と釣りをしたり、春先には海でわかめや天草を採ったり、山菜採りに行ったりという行動派。収穫した四季折々の恵みをより子さんがおいしく料理しています。「その土地で採れる季節のものを食べるのは、からだにとって自然なこと。ありがたくいただいています」。小学生のお孫さんは好き嫌いもありますが、嫌いなものでも必ず一口は食べることが決まり。「旬のものはおいしいから、少しずつ克服していけると思います」
 冷蔵庫にいつもストックしているのが自家製のめんつゆ。醤油、みりん、酒、昆布、鰹の削り節を鍋に入れて一晩置き、火にかけて5分間ほど煮て、冷めたらざるにキッチンペーパーを敷いてこせば完成。「めんつゆは買う人が多いそうですが、簡単なのでぜひ家でつくってみて」。そこには、「わが家の味を見つけてほしい」という願いがあります。出汁や醤油は日本人が慣れ親しんだ味。自家製のめんつゆは、砂糖を加えたり出汁で割ったりすれば煮物やおひたし、うどんのおつゆなどいろいろな料理に使い回せるので、「わが家の味」のレパートリーを増やすことができます。「便利な加工食品がたくさんある今の時代、一口食べてほっとできるわが家の味があるのは幸せなことだと思うのです」。家庭料理は繰り返しつくるうちにそれぞれのわが家らしさができ上がっていくのだとか。旬の恵みに感謝しながら囲む食卓が家族の健康を育み、ほっとするような味や匂いが幸せな記憶を育んでいます。

自然素材のものを取り入れて、くつろぎ感いっぱいに

 ヤマブドウのかごバッグ、木のお盆、陶器。より子さんが愛用しているものの共通点は、自然素材を生かした手仕事のものであることです。
 「かごバッグは丁寧なつくりに惹かれて購入しました。もう30年以上使っているでしょうか」とより子さん。あめ色に変化し、いい艶が出たかごバッグは、やわらかな質感で手にしっくりとなじみます。
 たくさん持っている木のお盆は、1人分の食事をセットしたり、お客さまにお茶を出す時に重宝。食卓にまとまり感が出て、見た目も素敵になります。「布のマットやクロスを敷いた時期もありましたが、洗うのが手間。お盆ならさっと拭くだけでいいし、配膳や片付けがしやすくて便利です」と理にかなった一面も。
 自然素材のものに宿る温もり、手仕事ならではの素朴な表情。使い込むほどに味わいが増していくのも魅力です。使う喜びだけでなく、インテリアとしてもくつろぎに満ちた空気をつくっています。

歳月をかけ、手をかけることで愛着が深まっていく

日々の繰り返しの中に楽しみや幸せを見つけて

 イベントなどを通じて、若いお母さん達に、段取りのいい家事の知恵を伝えておられるより子さん。「家事は本来、とても自由なもの。自分も家族も笑顔でいられるよう、自分に合ったラクなやり方でいいのです」。そんな考え方が共感を呼んでいます。
 より子さんの一日は、寝る前に洗濯して部屋干ししておいた洗濯物を片付けることからスタート。その後、朝食をつくり、夕食の献立を考えて下準備をしておきます。家族と朝食をとり、送り出したら後片付けや掃除。午前中にほとんどの家事を終わらせます。「面倒なことを先取りして終わらせておくと、気がラクになります」。午後はゆったりと残りの家事を片付けたり、お出かけしたり。自分の時間を楽しむ余裕が生まれます。そんな考え方や段取りは、一緒にくらすお子さんやお孫さんにも自然に伝わっています。料理の味付けや洗濯物の畳み方。段取りを考えて、家事や宿題を先に済ませておくのもより子さん譲りです。
 「家事は同じことの繰り返し。でも、繰り返しの日々を送れているのは平穏だからこそ。私は、それをとても幸せなことだと感じます」とより子さん。料理も掃除も、家事は目に見えてすぐに結果がわかるので、小さな達成感や充実感を得ることができる。そして、コツコツこなすうちに、自分に対する自信にもつながっていくとおっしゃいます。
 四季の移ろいの中で、その恵みを楽しみ、味わうこと。気持ちよく過ごすために自分なりの工夫を重ねること。そのくらしは、なにげない毎日の中に喜びがあり、世代を超えて伝えていきたいものがあることを教えてくれます。

Profile

●1946年生まれ。神奈川県葉山市在住。自宅で料理教室を主宰。主婦歴40年の経験を生かして簡単な家庭料理の伝授とくらしの知恵を交えた語りが好評を博し、さまざまな世代の女性から支持を集めている。お話し会を開催するなど、若いお母さん達の支えとなる活動も行っている。著書に『受け継ぐ暮らし〜より子式・四季を愉しむ家しごと』『暮らしをつむぐ〜より子式・日々の重ねかた』(技術評論社)がある。